chaina_shanhai01_17

デジタルカメラで撮ったRAW画像を、モノクロで現像した上海の写真です。
一昔前ならば、暗室で数ヶ月かかったような作業も、いまはパソコン上で簡単に
できてしまいます。紙焼きとの味わいの違いは厳然とあるでしょうが、これは
これで、写真の新しい楽しみ方のひとつだと思います。

古い話だが、鄧小平による改革解放政策で、1980年代に中国への個人旅行が突然しやすくなった。当時、外国人旅行者は原則的に人民元は使えず、兌換券(中国語でワイフイチェン)を使わなければならなかった。あくまで原則的に、である。ふだんの食事や買物では人民元が必要だし、また兌換券が使える場面でも、あまりにも交換レートが違うために、どちらを使うかで物価に大きな差が生じた。兌換券だとかなり割高になった。その頃、中国を旅する旅行者の間では、どの街で(兌換券と人民元を)闇両替するのが安全でお徳かという情報交換は、旅のテクニックとして必須のことだった。そんな闇両替に関する面白いエピソードがたくさんあるのだが、なんだか年寄りの昔語りみたいだからやめておく。

いずれにしても、その当時の人民元は驚くほど安く、多くの日本人学生がバイトで貯めた小銭を持って、中国を長期間旅行していた。撮るべき被写体がたくさんあるのと安い旅費のために、貧乏カメラマンの私もしばらくの間、中国へ頻繁にかよった。80年代半ばから90年代はじめにかけて計8回、通算すると1年半くらい、チベット以外のすべての省を旅した。旅に特化した中国語なら話せるようになった。西域で会った漢族の男は、君はどこから見ても福建省出身の中国人だと笑った。

中国に頻繁にかよっていた頃、上海は出入国の拠点だった。ほぼ毎回、鑑真号(関西と上海間のフェリー)での往復だったから。2、3ヶ月の中国の旅を終えて、帰国するために上海に戻ってきた時の安堵感や脱力感は、言葉にできないほどだ。中国の旅はストレスの連続で、2ヶ月も旅をすると心身ともに疲労困憊する。人口の多さの故か、人民の気質によるものか、おそらくその両方だろう。互いに押しのけ合いながら、たとえ半歩でも他人より前に出ようとするのが中国人民の性向(サガ)である、というのは言いすぎだろうか。とにかく、あと数日でこの国から出られると思うと、とめどなくホッとしたものだ。

あれから十数年、ぱったり途絶えていた中国に、ひさびさに行ってみた。といっても、東南アジアからの帰国の途中、上海に4泊しただけ。北京オリンピックにはまだ間がある厳寒の頃だ。ほほの感覚がなくなるほど冷凍状態の上海は、はじめての経験だった。毛糸の帽子セーター手袋、防寒具一式を買い、メインのカメラが故障していたので、サブのデジタルカメラ一台だけ持って街を歩いた。

写真の上段は、私の好きな豫圓の辺り。浅草(の近く)出身の私には懐かしい雰囲気の街だ。中段のお寺は玉佛禅寺。その下のノスタルジックな店は、昔の日本租界の多倫路文化名人街。下段は並木道におしゃれな店がならぶ衡山路と、その横手に広がる徐家淮公園。

街歩きの帰り道、衡山路裏のちょっとだけ高級な上海料理の店に入った。古いフレンチレストランのようなシックな店内。にこやかで礼儀正しいウエイター。とても中国とは思えないようなサービス。少なくとも、かつて旅をしていた頃には、こんな店に入ったことがない。コーンスープ、鴨と野菜の料理、そしてグラスワインを注文。ほどなく出てきた料理を見て仰天した。洗面器ほどもある陶器に入ったスープと、4人分はありそうな大皿に盛られた鴨肉料理。家族やグループで卓を囲むのが基本の中国とはいえ、一人客にも容赦なくこの量を供するとは。昔の中国はまだまだ健在だったかと、おもわず苦笑した。

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