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カンハは虎で有名なところである。付近のジャングル一帯が野生動物保護区となっていて、ジープで巡って虎を探す。動物写真に関してはまったくの素人であるが、何故か突然虎が見たくなってカンハを訪れることにしたのだが…。

虎は残念ながら見られなかった。他のジープが見つけたそうだが、僕たちが駆けつけたときにはすでに森の中。三日挑戦すれば必ず見られる、とガイドは豪語するが、ジープのチャーターは金がかかる。それに安物の望遠ズーム一本ではたとえ虎に出会えてもいい写真は撮れないだろう。というわけで、残りの滞在期間は村巡りに費やすことにした。

カンハは虎がいるぐらいだからインドでもかなりの田舎である。場所的はデカン高原北部。周囲には数多くの先住民族が住んでいて、定期市なんかも開かれるらしい。一応観光地なので村人の写真は撮りにくいかも、と想像していたがそんなことは全然なかった。一日歩けば、虎のことなんてすっかり忘れてしまうほど居心地がよい。人々は素朴で優しく、そしてよくは分からないが、「インド特有の深い情」のようなものを感じてしまう。僕は歩くほどにこの村が好きになった。

ところでカンハのあるデカン高原北部はインド人にとっての心のふるさととされている場所である。その中心となる州の名前はマディヤプラデシュ。中央の国といった意味で、実際、地理的にもインドの中央に位置している。山深い地形とジャングルからは多くの神話が生まれた。そして先住民の比率が非常に高い。先住民はインド人のルーツでもあり、さまざまな機会にふと感じる「インド特有の深い情」というものも、あるいは彼ら先住民から受け継いだものなのかもしれない。そんな考えが、カンハ滞在中にたびたび心をかすめていった。

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