2010年 11月 05日
デカン高原奥地にある神秘的な聖地。聖なるナルマダ川源流に位置している。
アマルカンタクは不思議な場所であった。森に点在する聖地は静寂に支配され巡礼者たちの歓声だけがこだましていた。人のいない聖域のかまどで火が燃え続け、裸の修行僧が遠くの森を眺め、木の上からは朽ち果てかけた神像がこちらを見下ろし、荒々しい苦行者が突然現れ何度も岩に肘打ちをくらわし、森の中から現れた少女は、写真を撮ろうとするとなぜか横笛を吹くクリシュナ神に変身してしまう。そして早朝の茶屋では中年の男が一人でずっと賛歌を歌い続けていたり、湖のほとりでは三人の男が木の棒で歯を磨きながら楽しげに散歩をしていたりで、眺めているだけで幸せになるような光景がそこかしこにあった。人々がこれほど気ままに楽しそうに生きている場所を僕は他に知らない。神さびた森に守られているという安心感からだろうか。