2010年 7月 12日
北海道から沖縄まで、日本全国をビーグル犬といっしょに旅した記録。2009年4月から2010年4月にかけて、総走行距離は、約2万7000kmにおよぶ。
地図
2009年4月に、2歳になるビーグル雄犬(名前はヴィーノ)を連れて、日本一周の車旅に出ました。
ワンボックスカーの後部座席を倒し、ベッドになるようにコンパネ・マットを敷いて平らにし、助手席にはケージを作って犬の居場所を作りました。夜は主に道の駅やキャンプ場に車を停めて、車中泊しながらの旅を続けました。
犬の目線で捕らえた日本の風景(もちろん人間から見たイメージですが)、犬の姿を借りて、日本の今の風景を撮影してみようと思いました。犬連れでなければ見ようとしなかった風景にもたくさん出会うことができました。「忠犬」や犬にまつわるゆかりの場所も訪ねました。
北海道のある道の駅で、「いろんなところに行けて、このワンちゃん幸せねぇ」といった人がいました。私は、「幸せかどうかわかりません」と答えました。飼い主の身勝手(長期に旅をすること)に付き合わされる犬は、たまったものではないのではないだろうか? 毎日の移動は犬にとって苦痛なのではないか?と、ちょっと後ろめたさを感じていたからでした。
でも、1年間日本をいっしょに旅してみて、そうとは思えなくなりました。
これは、たぶん人間も同じで、旅をしているほうが幸せを感じる人もいるので、犬だって、旅して毎日違う匂いで刺激を受けたほうがいいということもあるのではないでしょうか。匂いで世界を「見て」いる犬にとって、いろんな匂いを嗅ぐことは快感なのです。
実際、旅をして、うちの犬は、犬らしくなったと思います。野生的にもなりました。
普段はグータラでどうしようもないやつが、あるとき、条件が整うと、急に才能を発揮する人間がいます。犬も同じです。「おバカ犬」と陰口をたたかれても、ちゃんと自分の能力が発揮できる時と場所、条件を与えられれば、「おバカ」ではなくなることがわかりました。
普段は、よけいな事はしない、無駄なエネルギーは使わない、ただそれだけのことです。それは「おバカ」ではなくて、すごく「賢い」ことなのかもしれないと、この1年間の犬旅をして思うようになりました。
でも、逆に「おバカ」で何が悪い? とも思うようになりました。うちの犬は、「犬のしつけ」の常識から言えば、完全に「失敗」しています。
ただ私は、犬に「忠犬」を求めているわけではないことがはっきりわかりました。むしろ、やんちゃで、言うことをきかない性格の犬を求めているんだということに気がついたのです。だから「おバカ」は、「失敗」ではなく、「個性」なのです。
そもそも、私自身が優れた人間でもないし、ちゃんとした人間ではありません。飼い主が「おバカ」なのに、犬にだけに「忠犬」を求めるのもなんだかおかしな話です。
「駄犬」で何が悪い?という開き直り。それはそのまま、私自身の声でもあるんですよね。どうして、みんながみんな「いい人間」にならなければダメなんですか、という・・・。
※ 「犬旅」の写真は、「週刊朝日」(10月8日号)のグラビアに6ページで掲載されます。よろしかったら、見てみてください。感想をいただけると嬉しいです。