2010年 9月 01日
都会への幻想を抱いて新宿の夜を彷徨った日々。
アジアを旅するようになった頃、その一方で僕はなぜか東京に興味を持っていた。それがどういう理由であったのか、自分でも記憶が定かではないが、たぶん、写真を始めたことと関係がある。さまざまな写真で東京はその舞台になっていた。パリやニューヨークに負けないくらいに、東京には写真が似合っていた。そして写真の売り込みなどで東京に来るたびに、いつかは東京で写真を撮ってやろうと考えていた。
それから少し時を経て、東京に移住したのが8年前。でも東京への幻想はすでに消えていた。しばらくは東京写真のことも忘れていたぐらいだったが、2年前の夏の終わりぐらいから、ふとしたきっかけで、ふたたび東京の写真を撮り始めることになった。最初は近所(東京郊外の西国分寺)を撮り歩いていただけだったが、だんだん足をのばしていって、23区内もしばらく通った。その中心が新宿だった。
新宿を撮り歩いていて、つかの間、東京に幻想を感じていたあの頃の気分を思い出すことがあった。京都から夜行バスで早朝の新宿に降り立ったときのこと、あるいは、夕暮れから夜の副都心を歩いていたときのこと。東京に来るたびに一度は新宿に行った。新宿に行かないと東京に来た気分になれなかった。無知ゆえにそうなるのだが、当時の僕にとって、新宿は東京の象徴だったような気がする。
東京でのスナップ写真は多くがブレ写真だ。雑踏のざわめき、そして一瞬の光を撮るならこれしかないような気がして、夜の街を早足で歩きながら撮り続けた。ノーファインダーで撮ることが多かったのでセレクトできる写真はわずかだが、毎回膨大な数の写真を撮った。そのまま夜の街を突っ走る予定だったのだが、結局長続きはしなかった。数ヶ月で僕は都会を撮ることに疲れてしまい、川の写真に移行してしまった。
都内の川を撮る過程で今もカメラを持って東京を歩くが、都会の中心に行こうという気持ちは起こらない。とくにスナップはむずかしい。都会への過剰な思い入れや幻想がなければとても続けられない。ただ、わずかな期間ではあったが、一瞬の夢に浸れたことはよかった。
東京でのスナップ写真はまだあるので、あと1ページ作る予定です。