2010年 7月 14日
モン州の山の頂上に岩と一体となったチャイティヨパゴダがある。黄金色に輝くこの岩、外国人にはゴールデンロックという名で有名だ。崖ぎりぎりの縁に数世紀に渡りずっと不安定に位置している。ミャンマー人にとっては仏教の聖地のひとつだ。
最初のチャイティヨ訪問のときのことだ。この時期に行くつもりなどなかった。9月、雨期真っ最中で連日雨が降っていた。日本からの撮影依頼で急にチャイティヨへ行くことになったのだ。乾期なら巡礼客で賑わうチャイティヨも、雨期に来るような人間は全くいない。宿も私が独り占めだった。案の定、雨でゴールデンロックもかすんでよく見えない。いい写真など撮れるわけない、落胆したが天気だけはどうしようもなかった。
夜になり宿からゴールデンロックに向かった。相変わらずけっこうな雨が降っている。雨が上がるまでゴールデンロックの近くで2時間でも3時間でも待つつもりだった。雨の中、ライトアップされた金色の光が見えてきた。驚いた。昼間のチャイティヨとは全く違う姿を見せていた。海の中に黄金の岩が輝いているかのようだった。その昔、この岩は海中にあったという。その古代の姿が目の前に現れたかのようだった。夢中になってシャッターをきった。
写真は不思議だ。悪条件で絶対にいい写真など撮れないと思っているときに限って幸運がやってくる。その幸運は普段撮れない写真をプレゼントしてくれる。条件のいいときは逆にきれいだが普通の写真しか撮れない。悪条件には感謝すべきかもしれない。