2010年 8月 13日
ミャンマー北部、カチン州にミャンマー最大の湖、インドージ湖がある。巨大魚が住むとか湖中には古代のジャングルが水没しているとか、いろいろ伝説がある。ここで毎年2月から3月にかけて、インドージ・パヤー・プエという祭りがある。
インドージ湖2日目、前日泊まったムシロと毛布だけの掘建て小屋の宿から僧院へ移ってきた。大広間に200人ほど雑魚寝している。その一角を借りた。無料だ。おまけにここでの食事は全て無料。祭りの間、パゴダでお祈りしてここで食事をしてここで寝ている限り、ミャンマー人でも外国人でも誰でも全くお金を使わなくていい。それに、大部屋でも荷物の心配はしなくていい。僧院の中で盗む者など誰もいないからだ。ミャンマー恐るべし。
インドージ湖の湖畔ならぬ湖中に建つシュエミーズ・パゴダが祭りの主人公だ。乾期の終わりのこの時期は水位が下がり、いつもは舟でしか行けないこのパゴダまで歩いていける。参拝客はパゴダでお祈りをした後、祭りの出店を巡る。出店ではなぜか古着や食器なども売っている。祭りらしいものというと、人力メリーゴーランドや人力観覧車、射的場などがあった。映画館らしき小屋をのぞくとテレビでビデオをそのまま流していた。
夜になると僧院の一角で踊りの練習が始まりにぎやかになった。それが終わると声明の練習をするおばさんたち。外に出ると、ローソクの光で照らされた屋台が並んでいた。子供たちがお菓子を売っている店もあった。屋台通りがローソクの光の道になっていた。光の道の外れから琵琶の音が響いてきた。盲目の琵琶弾きが悲しい音を奏でていた。
日本に来たばかりのラフカディオ・ハーンが松江に赴任するための旅の道中、田舎の盆踊りに遭遇した。ハーンは異国で出会った祭りを夢のように美しく描写していた。インドージの祭りの夜にふとそれを思い出した。私も異国で夢の中の祭りにいるようだった。
ところで、インドージ湖で夜撮った写真はみなぶれている。フィルム撮影だからたぶん数秒の露出だろう。今の高感度デジカメだとぶれずに撮れるかもしれない。でも、夢の世界はぶれている。夢の写真を撮るときにはデジカメでもあまり高感度にしないほうがいいだろう。