2010年 9月 11日
バナウエは、フィリピン・ルソン島北部のコルディリェラ山脈にあり、首都マニラから車で9時間かかる。1995年、バナウエの棚田が世界遺産に登録された(棚田として登録されているのは、今のところここだけ)。
地図
バナウエの街から、相乗りトラックに乗り30分。道の分岐点で降りて、2時間かけて山越えし、バダッド村へ向かいました。すり鉢状の地形が棚田で埋まり、底の方に村があります。
バダッドの棚田では、行きたい場所があっても、なかなか辿り着くのは難しい。あぜ道は行きたい方向をあざ笑うかのように、予想外の方向にカーブしています。でも、村に唯一通じているのはこの畦道だけです。もちろん車はありません。
地元のイフガオ族のおばさんがやってきて、ある話をしました。去年外国人カップルが行方不明になりました。遺体は田んぼの中から発見されました。なぜ発見できたかというと、その場所の稲だけ育ちがよかったのでわかったそうな。あぜ道から転落したのでは?というのです。
まぁ、「だから私をガイドとして雇ってよ」という話なのです。案内人がいないと、好きな場所にもたどり着けないというのも事実だし、彼女を一日ガイドとして雇うことにしました。
夜、村を見下ろすゲストハウスに泊まりました。
雲間から月が出て、谷間に石垣の棚田が浮かび上がりました。木々の間を螢が飛び交い、犬の鳴き声が遠くに響いています。
「僕が子どもの時は、みんな民族衣装だったし、田んぼでコメを作り、自給自足の生活を送っていました。外界との接触も少なく、小宇宙といっていい世界でした。平和でしたよ」
バダッド村で民宿を経営しているイフガオ族の男はいいました。 棚田は世界遺産に登録され、観光客がたくさん訪れるようになりましたが、皮肉なことに、もっと良い生活を夢見て、町に働きに出た若者たちの何人かは、厳しい労働が待っている村には戻らなくなってしまいました。