2010年 10月 22日
ベトナム中部の世界遺産のちいさな町ホイアン。みどころが多いわけではないが、
その興味深い歴史と居心地のよさに長居をする旅人は少なくない。
ベトナムの国土は南シナ海にそって南北に長い。その長い沿岸部のちょうど中間あたりにホイアンの町がある。かつて、海のシルクロードの中継貿易で栄えたチャンパ王国の主要な港としてにぎわい、また時代が下って広南国(グエン王朝)の交易港として、江戸初期の朱印船もたびたび通い日本人町もつくられた。
いまのホイアンの町並に、その当時の面影を見つけるのはむずかしい。とはいえ、古い木造の家々が軒をつらねるせまい通りに、重畳した歴史が醸しだす独特の香気がただよっているのを感じる。そのあたりが、この町並みがユネスコの世界遺産として認められたゆえんなのだろう、と私は勝手に想像している。
東西1キロ、南北500メートルの町を見て歩くのには一日あればじゅうぶんだ。が、この町の居心地のよさに、つい二日三日と長居をする旅人は少なくない。私もそのひとりだ。
有名な観光スポットは多くのガイドブックやネット上に出ているので、写真の説明は省略する。ただ、最後の三枚はホイアンの町ではなく、20キロほど沖合の南シナ海に浮かぶクーラオ・チャムという小島だ。チャム(チャンパ)の島という意味で、チャンパ王国の貿易船や朱印船なども、おそらくこの島を目印にしてホイアンを目指したのだろう。浜辺に並んだ漁村には不釣り合いな、立派な石組みの港やそのかたわらの古い寺院は、往時の貿易船の風待ちや、航海の安全祈願のためにつくられたにちがいない。