2010年 7月 13日
インドとミャンマーの国境地帯は3000m級の山が連なる。ここに住むのがナガ族だ。インド側はナガランド州、ミャンマー側はサガイン州になる。日本にとって最も悲惨な戦いだったインパール作戦で有名な地域でもある。2000年まで外国人の立ち入りは禁止されていた。最近はきびい制限付きながら、入域は可能である。
ナガ族との初めての出会いは強烈だった。動物はオスのほうがメスよりも派手で美しいが、人間は逆に女のほうが着飾る。ところがナガは違った。鳥の羽飾り、トラの爪や牙、イノシシの牙、様々な装飾品で着飾っていた。それだけではない、男が男だった。強くないと生きていけないのがナガの男たちだった。
普段は男に対してあまり撮影意欲のわかない私であるが、ナガだけは違った。彼らの姿を見ると我を忘れてカメラをかまえた。ファインダーの中に浮かぶ姿は、今まで見てきた男とは全く違う存在だった。その姿を見、彼ら発する叫び声を聞くと自分自身の中の本来の男が目覚めるような気がした。だが、悲しいかな「文化的」生活にどっぷりと浸かっている私と彼らの差はあまりにも大きかった。
藤原新也が「チベットの空を見た者は不幸だ」と、ある本に書いた。深い紺色のチベットの空を見てしまうと、それ以外の青空は青空とは感じなくなるからだ。ナガに行った者は言うだろう、「ナガの男を見た女は不幸だ」。