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ヴァラナシは死者たちが行き交う聖地でもある。死者たちの魂とともに三途の川を渡って彼岸への旅に出てみよう。

ヴァラナシはともかく疲れる街だ。うるさい客引きが群がるのは構わないとしても、彼らの態度が変に馴れ馴れしいのがとても不愉快。とはいえ、いちいち怒るのもストレスも溜まるので、朝夕はボートに乗って対岸に行くのを楽しみにしていた。決まったボート屋の一群があって、近くを通りかかると声が掛かる。

ボートに乗ってガンガーに漕ぎ出す感触は何度味わってもいいものだ。鬱陶しい街を離れて今日もあの世の旅に出る。そんな開放感がある。ヴァラナシのガンガーは霧の朝や夕暮れに眺めているとよく分かるが、まさに三途の川である。三途の川のモデルはたぶんヴァラナシだろう(火葬場で有名な街であるぐらいだから当然そうなのだろう)。

此岸から彼岸まではざっと15分ぐらい。彼岸には何があるのかというと、ほとんど何もない砂地となっている。しかもかなり広大だ。商売に関するものは掘っ立て小屋の茶屋が一軒あるだけ。砂地の向こうは行ったことがないが、いくつかの村がある。さらにグーグルマップで調べると、ちょっとした幹線道路も走ってはいるが何故か大きな町は見当たらず、地図をたどっていくと、そのままデカン高原の山の中に続いていた。ということはどういうことか?つまり、ヴァラナシで火葬された死者の魂は三途の川を渡って対岸の砂地を通り、そのまま母なるデカン高原の山並みへと帰っていくのである。

対岸散歩は、朝と夕ならあえて夕を勧める。ガンガーをはさんで長く連なる街の向こうに夕日が沈んでいく。死者の気持ちになって考えると、このあたりで一度この世を振り返り、いろいろあった人生をちょっと懐かしみながら、最後にサヨナラして遠く黄泉の国へと旅立っていく。そんなイメージだ。死人になった気持ちで街を眺め、写真を撮る。そんなことが出来る街はヴァラナシをおいて他にない。


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